人生の転機

日々の事や過去の大きな出来事を綴っていきます。

留置場での初夜

猪木、藤波、長州のチームから留置場へと引き継がれた私。

扉を入ると目前にはドラマなどで見る、鉄格子の部屋がずらっと並んでいた。

しかし、雰囲気としては暗いわけではなく、壁・床など全体的な色調はベージュであるため、陰鬱な気分にはならなかった。また、会話の声もわりと聞こえてきたことで「あしたのジョー」で出てきたような「いじめ」「暴力」などのイメージは感じはしなかった。

 

すぐに檻の中に入れられるわけではなく、まずは別室へ通され持ち物確認や身体検査を行われた。

持ち物については運悪く仕事用のカバンを持ってきてしまったため、書類や文房具類が満載だ。刑務官は1個1個リストを作らなければいけないらしく、その書類作成だけで1時間近く要したと思われる。使用済みティッシュやあめの包装フィルムなど、これゴミでしょうというものもいちいち確認され、後半お互い面倒くさくなってきたので自らゴミとして選別したものは破棄してもらうこととした。

 

そして身体検査だ。噂通り、ボールの裏側やホールも見られた。ただ、じっくりというわけではなく、はいないね、という感じ。これでお泊りへの手続きはすべて終了だ。

現在着ている衣類は基本的に持ち込めない。特に紐がついているようなものはダメだ。ランニングのような下着もダメとのことで、私の場合、持ち込めたのが履いているパンツだけだった。ということで、スエット上下とTシャツ1枚が貸与された。色は報道などでよく見る、グレー1色だ。胸元に「留」というマジックのなぐり書きと文字を囲む〇。もうこれだけで精神的に参るアイテムだ。RPGなら呪い系のアイテムであろう。

 

4人定員の雑居房が6、7部屋ほどあり、その中の端から2番目の檻に入れられた。そこには先輩が2人おり、見た目はいわゆるソレ系の方ではなく安心だ。

こういう時、どう挨拶すればよいのか一瞬考えたが「よろしくお願いします」と会釈をしながらの挨拶をした。「こんばんわ」ではラッシャー木村になってしまうのでそれはやめた。

 

時間は19時ごろと思われるが、留置場スケジュールを把握していないので、果たして何をしている時間なのかは全くわからない。とりあえず先輩方はくつろいでいらっしゃるので、何かを邪魔しているということはなさそうだ。新入りは気を使う。

留置場ルールとして、基本的に本名で呼ばれることはない。番号だ。私は7番とナンバリングされた。先輩は5番と13番だ。これからこの中ではお互いを番号で呼び合うし、刑務官からも番号で呼ばれる。これも精神的にへこむ。一般社会とは明らかに違う世界・・・本名すら名乗れない、もはや名もなき修羅状態。もちろん、何かしら悪いことをしたので勾留されるわけであるが、冤罪である人も同じ扱いをされるので。現時点では起訴も裁判も行っていないわけで、当然有罪でも無罪でもない。それなのに、このまずは精神的に追い込むシステムは正直どうかと思う。

 

簡単にお互い自己紹介を行う。両先輩とも私より年下であったが、ここでは先輩なのでもちろん敬語だ。5番さんは聞くと7、8か月ここにいるそうだ。そんなわけで、この留置場内でもなんとなくリーダー格のようだ。ある意味これはラッキーかもしれない。マンモス西と一緒の部屋になったようなものだ。13番さんはおとといチェックインしたとのこと。ちょっと気が弱そうな感じだ。

当然であるが「なんで入ったのか?」という質問。簡単に概略説明を行う。5番さんは初犯であるが、このようなところの知識が豊富なようで「それなら2、3日で出れるかも」と私にとっては「ベホマ」クラスのお言葉を頂戴する。もう少し話をしたかったが、どうやら就寝準備をする時間らしく、5番さんに教えてもらいながら進めていく。

4人部屋のため、3人であれば余裕で布団を敷けた。新人なので空いているスペースに。21時に就寝となり、ペラペラの布団と毛布にくるまれて、不安を抱えながらも「ベホマ」効果ですぐに眠ることができた。

写真撮影~指紋採取~DNA採取、そして夕食・・・

取り調べは午後4時ごろ終わった。

その後、写真の撮影だ。

様々な方向からバシャバシャ撮られ、指紋も指先だけでなく側面もスキャンされた。

ほっぺの内側をスポンジのようなものでぬぐい、DNAも採取された。ついでに靴底もシールみたいのを貼られ型を採られた。いわゆる「ゲソ痕」だ。

 

これでもか!というくらいに人間としてのデータを採られた。

私というデータは警視庁のデータベースのHDD内に10MBくらい記されているのであろう。万が一、指紋を残すような事件や性犯罪を犯すと照合で一発だ。というかもう警察のお世話になるようなことはしない。

 

時間は午後5時くらいであろうか。

時計というものがないので、なんとなくの時間感覚だ。

取調室で夕食がふるまわれた。

内容は、白米・揚げ物・マカロニ・漬物である。それがプラ製の弁当箱に入っており、当然冷めている。水分はお茶のみ。

その時は「これは留置場で出された、昼飯の残りに違いない」と思っていたが、それは翌日に間違いであることがわかった。

今、目の前にある弁当はまぎれもなく皆と同じ夕食なのだ。

昼食は自分で別注しないかぎり、食パン4枚とチープなおかずとジュースなのである。

 

一応、全部食べた。

お世辞にもうまいとは思えないが、初めて食す「くさい飯」。

くさくはないが、うまくもなかった。

食べているときは片手錠と呼ばれる形態になる。

利き腕ではないほうに輪っかを2つかけるのだ。

腰縄は椅子に縛り付けてある。

逃げようなんてこれっぽっちも思っていないが、もしこれを無実の人がされたら屈辱だろうなとは思った。

 

18時くらい。警察署内の留置場へ移動するとのこと。

手錠は再び両手にはめられ、腰縄をしめなおす。

そして前に猪木、腰縄を長州が持ち、藤波が付き添うという、

万全のタッグ結成だ。

長州と藤波がやりあい・・・ということもなく、

階段を使い留置場のあるフロアへと連行。

頑丈な錠前が2個ついた扉の前で留置場の刑務官へ引き継がれる。

ここからは刑事も入れないエリアらしい。

扉は開かれ、ついに留置場という未知の空間へ足を踏み入れたのである・・・。

 

 

逮捕~取り調べ

取調室へ連れて行かれ、逮捕状を執行される。

その瞬間より、被疑者となる。

そして、手錠をかけられ逃走防止の腰縄もつけられる。

それまでのどこかのんきだった気分は一瞬にして消え去り、

どこか現実ではない部分も感じながらも取り調べは開始された。

 

取り調べの担当は、猪木。

勾留中、ずっとそれは変わらなかった。

犯罪にランクをつけてはいけないと思うがあえていうなら、

殺人を10段階の10とすると、私の犯罪は1くらいである。

それもあるのか、猪木は特に威圧的な言動は釈放されるまでなかった。

フレンドリーに近い接遇であったので、その部分では救われた。

 

取り調べ開始はおそらく昼の12時くらい。

昼食が出るのかと若干期待していたが、結局お茶しか出ず。

忘れたのか、最初の食事は夕食となった。

さすがに緊張していたのか、昼食時はそれほどの空腹感はなかったので特に問題はなし。

 

取り調べ室は、刑事課のフロアと隣接というか、デスクが並ぶフロアの端にある感じ。扉はあるものの勾留中の取り調べが3、4回あったが、一度も閉められることはなかった。閉めると監禁とか言い出す奴がいたのかな?

おかげで刑事フロアから丸見えで、時々視線を感じていた。

部屋は3畳ほどの、デスクと椅子が3つあるだけだ。

「吐け!」と顔に近づけるデスクライトもなし。

あるのは調書を入力するノートPCと小型プリンターのみ。

 

取り調べが開始された。

まずは、自分がしたことを「いつ」「どこで」「なぜ」「どうした」を簡素にA4紙1枚に直筆で記す。

たとえばだが・・・

「私は平成99年1月1日に株式会社××から〇〇を△△という理由から盗みました。」という内容をもう少し細かくしたものを記入した。

これの紙面があとになり非常にプラスにもマイナスにも作用するもので、私の場合、「なぜ」の部分を最初から記しておいたことで、のちの裁判で有利とまではいかないが動機という部分では私にプラス(情状酌量)に働いたと思われる。最初の段階でそれを言っておいてよかったと弁護士からも言われた。

逆に言うと、後で供述を変えた場合「最初はこう言ってたじゃないか!」と検事や裁判官に突っ込まれただろう。それくらい重要なものだと、今になってそう思う。

この内容については、刑事のチェックはなく、基本は自分の表現方法で記すことができる。

 

それを書くと、取り調べの開始だ。

事件の核心などではなく、まずは生い立ちなどを聞かれる。

いわゆる「身上経歴」だ。どこで生まれ、どこの学校に行き・・・などだが、刑事の資料をちら見すると見覚えのある履歴書が・・・。どうやら、以前働いていた職場が提供したようだ。そのことについてはとやかく言わない。なぜなら、私が犯罪を犯してしまったのが元職場であるからだ。

履歴書あるならそれを見ればいいじゃん、とも思ったが一応本人から聞き取らなければダメなようだ。親の年齢とかすぐわからなかったけど・・・。

要は、私は今まで普通に暮らしていましたよ、という内容なのだが、あらためて文章にするとそれなりに幸せな人生だったな・・・と感じた。

 

さて、この調書類だが、「相棒」等でみられる、いわゆる書記みたいな警官はおらず、

猪木が取り調べを行い、それをリアルタイムでPC入力している。

つまり刑事がPC入力遅いと取り調べも長くなる・・・ということだ。

猪木は比較的ふつうと思われる。

送検するための供述調書のため細かい部分まで聞かれず、本当に骨格だけの供述調書となった。

 

猪木があきれるほど、私はペラペラと供述したので

「こんなに正直に話す人は初めてだ」と褒められ?た。

隠してもしょうがないし、こうなったら1日でも早く釈放されたいという気持ちからだが(この時点では3、4日で出れると思っていた)それもあり前述のとおり猪木たちに対して嫌悪感をいだくような言動は全くなかった。

むしろ「あなたはこんなところにいるべき人ではない」などと、私がきわめて普通の人間であることを証明してくれた。

逮捕後の流れというものを把握していなかったが(逮捕後、48時間以内に送検とか)、「まあ、3、4日我慢すれば・・・」という感覚であったのは本当だ。

 

 

 

 

 

逮捕状請求

新日本警察署に到着。

任意同行からか、入るのは正面入り口から(^_^;)

まるで一般の人と同じだ。

猪木・藤波・長州とエレベーターに乗り、刑事課のフロアへ。

じろりとこちらを見る刑事たち・・・。

「こいつなにやったんだ」という顔である。

奥の取調室に入れられ、あらためて事件について聞かれ「やった」と答える。証拠品も提出したので「クロ」と確定。これから裁判所に行って「逮捕状」を請求してくるのでそれまでは待てとのこと。

とはいえ、勝手に歩き回ることはダメなので、取調室とは違う部屋で待機。それも長州が常に貼り付いている状態。

そんな時間がおよそ、1時間半・・・。

「逮捕」という現実が目の前にある今、考えたのはまず「彼女」のこと。

妻ではない彼女である。

別居の理由は彼女がいたからではないので後ろめたい部分はないが、世間的に見ればやはり許されない関係であろう。さらに、彼女も別居で離婚調停中である。ダブル不倫・・・といえばそうなのだが、事実上はお互い正常な夫婦関係でないことは間違いないことから、人目を忍んだ状態ではあるが彼女とは恋愛関係だ。

そのようなわけでまず、彼女に対して申し訳ない気持ちと毎日連絡している中だったので、急に連絡が途絶えたら心配するだろうな・・・ということが1番先に脳裏に浮かんだ。

ただし、この時点では逮捕されるとはいえ、認めているしブツも提出したので、まあ2、3日で帰れるだろう・・・と、どこか呑気にかまえていた。

それにしても、会話もなく、ただ不安なだけの1時間半はきつかった・・・。

そして、藤波が「逮捕状」を持ってきたのである・・・。

警察来襲

ある日の朝、私はいつも通りに出社をした。

8時半始業で、いつも通りに朝礼を終えた。

8時50分位だったろうか、受付の女性が私のところに来て

「新日本警察(仮称)の方が来てます・・・」とのこと。

 

その瞬間は正直「?」だった。

入口に行くと男性が2名おり「ちょっと外で・・・」とささやく。

会社入口から出ると「新日本警察(仮称)だけど、何で来たかわかる?」

と「警察24時」でよく耳にするセリフを言われる。

警察署の名称を聞いて(あれか!)と思い当たるものの、そこは反射で

「さあ・・・」と、これまた「警察24時」でよく聞く返答。

以降、この新日本警察の刑事を猪木と呼ぶ。傍らには藤波もいた。

 

猪木「本当に知らない?窃盗の件なんだけど」と話したところでごまかしても無駄だなと観念し、

「はい・・・やりました」と出会って2分で白状。

 猪木「このまま警察署に来てもらうから」

私「はい・・・」

猪木「車に乗ってもらうから、用意してきて」

その時点では、まあ事情聞かれて今日中に帰れるだろうと思っていた。

とりあえず通勤兼仕事カバンを持ち仕事着に上着を着て裏口から出る。別に逃走するつもりではなく、ここは外履きで出るのが裏口であるためだ。

外に出ると、長州がいた。逃走防止にために裏口にもいたのであろう。

一瞬、お互いに緊張が走ったが、支度をして裏から出た旨を長州に告げると表口に停められていたミニバンを案内された。

その間、猪木と藤波は会社の上司に「窃盗事件の捜査で連行します」と伝えたそうだ。

 

私は車の後列まん中に座らされ、猪木と藤波に挟まれる形になった。運転は長州だ。

この時点では任意同行のため、手錠はされていない。

というか、私自身は逮捕されるなどとは微塵も思っていないので、何となく気楽な気分であった。

猪木「新日本市の事務所に入って、〇〇盗んだ?」

私「はい」

猪木「それは今どこにある?」

私「自宅」

猪木「自宅って・・・国際市のマンション?」

私「いえ、別居して今はこの近隣のアパートに一人住まいです」

 

私は、この数か月前に別居のため引っ越していたが、住民票をまだ移していなかった。この「おはよー逮捕」と呼ばれる朝の逮捕は通常自宅に行くのだが、そこには妻のみ。夫は?と聞くが転居先は知らせていなかったので「さあ」と返答したらしい。ここで別居しているとはいえ夫婦なので「警察が来た!」と私に連絡されたら逃亡の可能性もあるとのことで、本来であればあまりないらしいが職場に来たと、あとで猪木から聞いた。故意ではないが、警察を出しぬいたことに少しうれしさを覚えた。

それにしても職場に来られたら・・・もう警察沙汰というのがバレバレなわけで、明日どうやって言い訳しようかなとも考えていた。

 

車は現住のアパートに到着。「〇〇(盗んだもの)、あるなら持ってきて」とのことなので、家に入り取ってくる。警察が家に入らないのは、まだ任意段階であるし令状もないからであろう。

ブツを渡し、再び乗車。車は新日本警察署へ行くとの事だが、道中(20分位)何を話したかはあまり覚えていない。多分「なんでバレたのか」みたいな話しを私からしたと思うが、それは立証の重要部分の一つであるので車内では答えてくれなかった。

 

そして車は新日本警察署に入っていくのであった・・・。

諸元

本題に入る前に、私の諸元を。

 

性 別:男性

年 齢:ほぼ50歳

家 族:既婚(別居)子供なし

職 業:堅い仕事

犯罪歴:小学生の時に駄菓子屋で何かを窃盗。

    中学か高校の時にショップでFCソフト「ポケットザウルス」を窃盗。 

    高校の時に模型屋で1/144「ニューガンダム」のファンネルパーツのみ窃盗。

 

まあ、立派な犯罪ではあるが、時効ということで・・・。

警察のお世話になった事もない。

車に野球のバットを積んでいて、職質で怒られたことくらいww

 

 

 

 

 

プロローグ

いままでの人生(まもなく50歳)で大きな出来事を3つあげろ、

と聞かれたら間違いなくランクインすることがある。

それは、逮捕され拘留され有罪となったことだ。

 

一連の出来事からおよそ1年経った今、自分自身の記録ために。

また、これから逮捕されるかもしれないw人達や同じ経験をした人達との、

情報共有・共感のためにブログを開始した。

 

身バレしない程度に若干の脚色をするが、基本的には事実のみを記していく。

 

実はこれを書いている時点で裁判は正式には終了していないが、

それは控訴審でありどのような結果になるかはおおよそ検討がついている。

控訴審は2019年1月を予定しているので、このブログもそれくらいを目途に時系列として追いつければと思っている。