人生の転機

日々の事や過去の大きな出来事を綴っていきます。

検察庁①

逮捕3日目。

今日は検察に行き、検事の取り調べを受ける日だ。

 

朝8時半くらいに呼ばれ、お出かけの支度。

別に何を持っていくわけでもないが、ボディチェック後、手錠をかけられ、腰縄をつけられる。複数人の場合は数珠つなぎとなる。

新日本警察署は検察・裁判所の近隣にあり、護送車もいろいろな警察署を回ってきて最後となるためだいたい9時くらいの出発となる。遠方の、特に1番最初に回る警察署は8時くらいには出発するそうだ。立地面は恵まれていたと思う。

9時ごろ、護送車が到着すると遠くから「到着~」と叫び声。同時に留置場の扉が開き、この日は3人パーティで階段を降りていく。ちなみに【盗賊】【盗賊】【暴行】のバランスの悪いパーティである。

「7番しんけん!」と送り出され「真剣?そりゃあいつでも真剣だよ!」と言い返したかったが、どうやら「新件」らしい。新しい案件という意味であろう。ちなみに検察に行く時が「順送」帰りが「逆送」という。勾留中、変な専門用語だけはたくさん覚えた。

警察署の裏手に護送車がいるのだが、そこには10人以上の警官がずらりといた。後で聞いた話だが、護送車に乗り込むときに逃走した奴が以前いたらしく、それ以来厳重な警備になったとのこと。その中には、猪木刑事もいた。軽く会釈。

護送車に乗り込むと、なんというか、新日本警察の勾留メンバーとは空気感の違う連中ばかりが乗っていた。私が勾留中に知り合った人たちは、どこか明るく、陰鬱な犯罪者という感じは全くしなかった。バカ話ばかりで、ある種仲間意識も芽生えるくらい気のいい連中だった。しかし、どこの警察署から来たかは知らないが、一見して「ワル」「変態」など、申し訳ないが犯罪者にふさわしい風体の人間ばかりであった。

 

護送車内は私語厳禁である。警察署から出て5分ほどで検察につくため苦にはならないが、窓の外は普段からなじみのある風景である。いつも見ていた、ビル・コンビニや何気ない出勤・通学の風景、まさか護送車の中からみる日が来るとは思ってもみなかった。

車は検察に到着し、地下駐車場へ入っていく。車内で全員に付け替えられた紐は手錠の真ん中の輪っか部分を通されている。手錠のこの部品がそのような役割であるとは知る由もなかった。下車するたびに「1」「2」「3」とやたらでかい声で威嚇するように我々をカウントする。何度も言うが、この時点では有罪も無罪もない状態の人間たちなのである。それなのにこの扱いは、権力に屈服させ、無実の人間でさえ犯行を自白してしまう力を感じた。気の弱い人間であれば耐えられないであろう。

地下道を進み、やがて「バイオハザード」に出てきそうな鉄条網の扉が立ちはだかる。中の警官がこちらを確認した上で扉をあける。ここをくぐるときも数珠つなぎで当然大声カウントもある。ここは検察庁の地下室で「同行室」と呼ばれる場所である。ここにいったん集められ、上階の検事の部屋に呼ばれるまで待機するところだ。そこはまさにコントで見かける牢屋のつくりで、部屋の両側に噂の固い木の椅子・・・椅子というか見るからに固そうな板が座面と背面にそそり立っている。ランダムに牢屋に振り分けられる我々。1室8人定員だが、今日は6人なのでぎゅうぎゅうではない。とはいえ、板に座りどうやら検事から呼ばれているとき以外は私語も禁止でただひたすら待つだけらしい。現時刻9:30、帰りは15:30くらいとのこと。パートさんの勤務時間ですか?というくらいだ。検事との話はおよそ30分くらいなので、5時間半は座っていることになる。痔じゃなくて本当よかった・・・。

 

さて、同行室だが、8人定員の牢屋が10室以上はあった。定員換算で言えば、100人は収容できるだろう。この日は満員ではないが、おそらく60人は閉じ込められている感じ。10時くらいから「〇〇8番!」と呼ばれる始める。〇〇の部分は、その警察署名だ。つまり私が呼ばれるときは「新日本7番」となる。ただしいつ呼ばれるかはまったくわからないのだ。ひたすら待つだけ。寝ていてもいいが、ただでさえ運動量が少ないので夜に寝れなくなる恐れがあるのでなるべく寝ないで待ってみた。暇なので、検事に呼び出される人たちを観察することにした。見るからにチンピラ、絶対性犯罪者、ちょっと頭が・・・など、いろいろだ。そして、10人に1人は外国人だ。同室のアジア系の男性は、突然号泣したりで最初はちょっと面白かったが、まあ、異国の地で逮捕されたんじゃ不安だよなと同情しつつも、それが30分おきだったのでだんだんうざくなってきた。

時計が全くないため、誰かが警官(なのか?)に聞かなければまったくわからないが、むしろその方が時計を見ることで絶望するよりはよかったかもしれない。とにかく尻が痛いのも辛いが、時間の経過がこれほど辛いと思ったこともない。留置場にいるほうがどれだけ天国か。私は拘留期間中、計4回検事取り調べがあったが、2回目くらいから「脳内カラオケ」を実践した。ただ頭の中で歌うだけなのだが、通常の歌では5分弱で終了してしまうので、主に歌ったのはXJAPANの「ARTOFLIFE」だ。ピアノソロを含めると30分ほどの大作だが、さすがにピアノソロを脳内プレイするのは悲しいのでソロカット版を採用した。それでも20分弱ある。イントロから演奏、もちろんボーカルを脳内プレイするのだ。しかし、この曲、AメロBメロサビなどが正直ハッキリとしない。発表以来、約25年聞き続けいていると言っても過言ではない曲なのだが、脳内プレイをしていると変なループをしてしまい中々先に進まないのだ。話が逸れてしまったが、この脳内カラオケのおかげで、少なくとも1曲20分弱はほかのことを考えずプレイに没頭できるのだ。

 

新件取り調べは11時50分くらいに呼ばれた。「あれ、昼食は?」と不安に感じるスタート時間だ。牢屋から出され、手錠確認、腰ひも装着の上、警官一人に背後につかれ歩いていく。地下からエレベーターに乗り、4Fか5Fで降りた。オフィスのようなつくりの建物内を指示通り歩き、馬場検事の部屋に通される。中もオフィスそのもので、やたらでかい机の向こう側に馬場検事が横に鶴田事務官が座っていた。座れというので座る。警官は後ろに待機。当然、腰縄を握ったままだ。

名前・住所など告げ、刑事が作成した調書を元に今回の事件について合っているかを聞かれたので、間違いないと答える。以上。

「え?こう、弁明とかそういう機会は?」と言いそうになったが、馬場検事は先に「まだ聞きたいことがあるので何度か来てもらいます」とのこと。2泊3日コースはいったい・・・。でも、明日の裁判所での勾留質問で釈放となる可能性もあるからまだ望みはあるのだ。釈放され、在宅での取り調べもあるだろう。そんな考えだったので、この時も割と、ああそうという感じだった。初回は20分ほどで終了し、下に戻ると、他のやつは食事終わったから別の牢屋で一人で食え、とのこと。いや、むしろありがとうございますだ。しかし、食パン4枚にジャム類3種、棒チーズ1本、パックジュースと白湯とはこれ如何に?ごみの関係もあるのだろうがこのお粗末さ。ゴーンさんもこれと同じなのだ。ひどすぎ。留置場にいても食パンなのだが、おかずがつく分まだまし。

 

食後は元の牢屋に戻り、後はひたすら全員が取り調べ終了となるのを待つのだ。自分が終わったから帰りますとか、近いし逃げないので署に戻りますは許されない。ひたすら待つこと15時半、ようやく戻れる兆しが。護送車のコースごとに連れ出され、身体検査され、手錠・腰縄・数珠つなぎとなり乗車となる。帰るとなればウキウキだ。そして帰りは1番目なので16時には留置場に戻る。逮捕3日目にしてわが家感が半端ない。尻が痛いとか食パン地獄だとか、5番さんとおしゃべりしてストレス発散。

明日は裁判所に呼ばれ、検事の勾留請求について勾留質問がある。聞くと、裁判所も板地獄なのだとか。当然食パンもセットだ。気が重い・・・。