人生の転機

日々の事や過去の大きな出来事を綴っていきます。

留置場の1日<午前>

逮捕5日目。

取り調べ、地検、裁判所のイベントが全くないと1日中檻の中で過ごすこととなる。地検、裁判所での拷問椅子での待つ時間も辛いが、単に時間をつぶすということがこれほど苦痛であるとは想像もしなかった。

イベントのなにもない1日をお伝えしよう。

 

6:30 起床~点呼

時間前に刑務官の動きがあわただしくなったり、食事時に敷くゴザが檻の前に置かれるので実際にはその前には覚醒している。やることないから寝ているだけ。

その後、檻の番号順で布団を指定された箇所へ運ぶ。置く場所や置き方も指定されている。いったん檻へ戻り、順次呼ばれ次第、洗顔・洗面となる。昔ながらのステンレス製の横長洗面台に7,8人同時に並ぶことができる。布団を運んだ時や洗面時に他の檻の人とあいさつや会話は可能である。洗顔・歯磨きはよいが、蛇口からの直洗髪は禁止とのこと。水を手にすくって髪を濡らすのはいいらしいが、直洗髪がダメな理由がよくわからない。

檻に戻り、食事用のゴザを敷き、全員洗顔が終わると点呼が開始される。偉い人と数名の刑務官がそれぞれの檻を回り、収容人数・番号を確認するのである。その時はあぐらでもかまわないので座り、両方の手のひらを上にして待つのだ。刑務官が自分たちの前に来ると「〇号室、現在〇名!〇番!「はい」「〇番!」「はい」とやりとりをし儀式終了となる。

7:00 朝食

コンビニ弁当よりはるかに劣る内容の朝食。プラ製の容器に、白米・おかず・漬物が基本で汁物はない。おかずもローテーションのようで、揚げ物→煮物→魚→卵という感じ。後は薄いお茶。醤油とソースは自由に使える。拘留中、極度の空腹というのは感じなかったが、わびしさは毎食ごとに味わった。

7:30 運動/掃除

朝食後は、運動という名の外気を吸える時間がある。およそ15分ほど。廊下の奥からベランダのような場所に出られる。とうぜん周りは壁であり景色は見れない。空だけは金網越しに見ることができる。少し前まではタバコを吸えたそうだが、今は一切禁止。吸わない私にとっては問題なし。名目上運動という時間だが、まじめに体操などをするものはいない。この時間で電動シェーバーでの髭剃りができる。〇立製の安いシェーバーであるため使用後のヒリヒリ感は半端なかった。またこの時間は比較的ゆっくりと他者と交流できる貴重な時間なのだ。私が新日本警察の留置場にいた時、入れ替わりはあったものの常に20人くらいはそこに居を構えていた。何日もいるともはや顔なじみが出来、朝から下らない話や今日のお互いの予定などを伝え合うようになってくる。ここにはかなりの長期組が5,6人おり、それらがここの留置場の中心となっている。一緒に作業をしているとかではないし逮捕時の共犯でもないが、ものすごい連帯感が生まれていた。もはや仲間だ。私もその輪に入れてもらったが、社会と切り離された場所での人間との交流が妙に心強かったと覚えている。さて、運動の場所の人数制限があるので残された檻チームはトイレ掃除と床の掃除機がけだ。それぞれ1セットずつしかないが、運動チームと掃除チームがうまく流れるように刑務官がコントロールしている。ちなみに留置されている半ばくらいで知ったのだが、檻によってトイレが和式・洋式があるとのことであった。私のところは洋式であるが、和式組からは「うらやましい」との声が常々に聞こえてきた。この時代に毎日和式で用を足すのも中々大変だよな・・・と思った。

8:00 入浴

週2~3回の入浴がある。私の時期は2回の時期だった。汗はかかないが、それでも週2ペースだと頭がかゆくてたまらない。1回で4,5名づつの入浴となるが、銭湯を小さくしたような造りで中々快適であった。シャンプー・石鹸は貸してくれる。なにより、浴槽の深さがよい。肩まで浸かるどころか、鼻まで浸かれる。お湯はガンガンかけ流し状態であり、まさに湯水のごとく税金を使っている感じであった。ただし、脱衣所に入室→退室まで15分ルールであり、のんびりはしていられない。それでも浴後のさっぱり感は生き返る気分だった。ちなみにドライヤーなどはない。

運動・入浴後にはその日に読むことができる本を3冊選ぶことができる。移動式のワゴンに並べられた本はおそらく先輩などが置いて本なのであろう。7割が新書・文庫の小説であり、漫画や雑誌類はほぼない。ここでの本の選択はかなり重要だ。しょうもないネタ系の本を選んでしまうと、下手すると10分ほどで読み終えてしまい、その後の膨大な時間を持て余してしまう。ちなみ、本の追加やチェンジはきかない。1日3冊なのだ。普段から積極的に小説などは読んでいなかったが、読書自体は嫌いではないのでこの機会に色々と読んでみた。宮部みゆき東野圭吾は名前は知っていたが全く読んだことがなかったので、それぞれ3冊ほど読んだ。中でも高野和明の「13階段」はかなり引き込まれてしまった。檻に戻り何をしてもかまわない時間となる。

9:30 点呼

外出系のイベントがなければ、留置場での次の出来事は点呼だ。この時間での点呼は順送された人達と残った人達をあらためて確認する意味もあるのであろう。

点呼後から昼食までは寝ていようが、本を読んでいようが何をしても大丈夫だが、当然定期的な見回りは来るし、自分の服や本を枕にして寝ることだけは禁止であった。

本を読んだり、居眠りしたり、5番さんと話をしたりして午前中は終わる。